2021年10月
「未来の農業を創る」次世代トマト収穫 支援ゴーグル開発へ~旭川高専2年生・上田一磨さん挑戦
「未来の農業を作りたい」。北海道新聞記事で町在住、旭川高専2年生の上田一磨さんが取り上げられた。上田さんは同校「旭川トマト研究会5G部局」チーム代表者。高専ワイヤレスIoTコンテストにアイデア「次世代トマト収穫支援ゴーグル with5G」を応募し見事採択された。技術実証を進めている。
内容は、国内・国外の野菜生産で生産額トップを誇るトマト収穫を支援する次世代トマト収穫支援ゴーグルの開発。糖度・酸度・大きさの推定機能、市場価格推定による収穫時期の最適化機能をもたせるもの。支援ゴーグルが5Gネットワークに接続されることで、ゴーグルから得られる高精細画像を無圧縮でクラウドサーバにアップロードし、AIで解析後、解析結果をゴーグルへリターンさせるまでの一連動作を低遅延で実現可能。
さらに、同じ農場で支援ゴーグルを装着した作業者のデータを高速に同期し、最適な協働作業を実現。トマト以外の野菜にも適応可能なシステムであり、農業のDX化に大きく貢献できるという。
「スマート農業」、「農業デジタル変革(DX)」。昨今、耳にする機会が多い言葉。農業者の高齢化や労働力不足が進む中、デジタル技術を活用して効率の高い営農を実行しつつ、消費者ニーズをデータで捉え、消費者が価値を実感できる形で農産物・食品を提供していく農業への変革が求められている。上田さんのチャレンジはまさに「未来の農業を創る」ものだ。
上田さんの実家はトマト栽培農家。父、上田浩さんは当麻町そ菜研究会トマト部会長を務められ、収益性の高い産地形成に先導的なお力をいただいている。実家の収穫を手伝う中で「どれがおいしいトマトなのか知りたい」との好奇心から、農家の負担軽減につなげようと同校の仲間とともに開発に乗り出した。
当麻町の強みである水稲を軸とした、施設園芸作物との複合経営による「稼ぐ農業モデル」。日本一の高級ブランドスイカ「でんすけすいか」、北海道一生産量を誇るキュウリ、高品質なキクやバラなどの花き類と並び、その一翼を担うのがミニトマト栽培だ。
2017年6月に初稼働した当麻農協ミニトマト選果施設は、国内初の糖度測定センサー装置をはじめ、傷や大きさをカメラで判別し機械が自動で仕分けるなどの最新技術が凝縮されたオートメーション施設。町も施設整備補助で後押しさせていただいた。このほかにも育苗施設からの一元的な苗供給、ハウス施設整備助成など、当麻農協や関係団体、町が連携し栽培促進の下支えを行っており、順調に実績をあげられている。
これまで、当麻町をはじめ主要他産地も高収益作物栽培促進として施設整備などハード事業を推進してきたが、上田さんの技術開発は栽培現場の「人」に着目した新たな視点でのソフト事業。科学の力で、収益性の向上と作業負担軽減につながるイノベーション(技術革新)を目指されている。先端技術が組み合わされたハード事業とソフト事業の両輪、次世代農業を切り拓く力、とても興味深い。
「親への恩返しも含めて完成させたい」と今年中の完成を目指される上田さん。さらにその先の実用化までには、乗り越える課題があるのかもしれないが、農業の未来、郷土を思う若者のチャレンジが結実されることを願っている。
当麻町長 村椿哲朗(広報紙我が郷土 令和3年10月号掲載)