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2020年10月

森林の豊かな恵みをまちづくりに ~地材地消の歩みの軌跡

「地元木材 まちを変える~上「ぬくもり 人を呼ぶ」・下「地材地消 浸透狙う」」。北海道新聞にて特集連載記事として掲載された。まさに地材地消、木育推進を進める当麻町の試みの軌跡である。
2010年度、当麻駅前団地の公営住宅建築から始まった当麻町産材の柱や梁など、建築材としての活用。その後、国としても公共建築物の木造化を推進するが、当麻町は国や道に先駆け積極的に事業を推進してきた背景がある。
2011年度には町産材の利用促進方針を定め、公共施設への木材活用指針をより明確化。40年から60年前に植林されたカラマツやトドマツの多くが伐期をむかえている中、付加価値の高い有効活用策として、菊川健一前町長が前面に掲げられた当麻町ならではの独自政策であった。
菊川前町長は当時おっしゃっていた。「未来へ豊かな資源をつなげるため先人たちが一株一株植え込み植林し、北国の厳しい自然環境にも耐え長い年月を経て育ってきた木々は、当麻町にとって思いのこもった貴重な財産である。パルプ材や木質燃料として大量の木々が一律に消費されるより、可能な限りできれば住宅建材として、付加価値の高い材として、暮らしを身近で支える資源であるべきではなかろうか。木々もきっとそう願っているはずだ」。
前例のない挑戦であったが、町内にとどまらず足りない力は町外事業者の理解を得て参画いただき、川上(林業・素材生産業)、川中(製材・集成材工場)、川下(プレカット工場)の全てを一つのチェーンに。木材業界では難しいと言われていた木材流通加工のトレーサビリティを実現させた。
公共事業で培われた豊富なノウハウとネットワーク。地材地消の取り組みをさらに推進させるべく、一般の戸建住宅への活用促進を強力に後押しするため、2013年度、当麻町産材活用促進事業を立ち上げる。
住宅新築の建材の半分以上が町産材であれば、町産木材購入費を最大250万円助成する制度。事業啓発広報活動を積極的に展開した結果、事業開始初年にも関わらず2013年度に20件、その後も年平均15件ほどで推移し、2019年度までに106件が新築。
また、町出身Uターン者への別の助成制度による町産木材活用促進事業分を含めると、新築住宅への活用が15件ほど上乗せされる。
さらには、店舗への同様の助成制度も設けており、改築を除いた新規新築開業者でいえば6件を記録。魅力あふれるお店ばかりで、経営者も30歳代から。新たな風が吹き込まれ、商業活性化の大きな力となっている。
転入者から転出者を差し引いた社会増減は、この10年間で最も落ち込んだのが2015年の67人減であったが、2018年に2人増、2019年に26人増を記録した。
地域資源を最大限活用する「食育・木育・花育」による当麻町ならではのまちづくり。子育て環境の充実、教育、福祉、文化の向上が図られ、また特色ある農業振興、林業振興、商工業振興が進んでいる。当麻町のまちづくりが非常に良い方向に向かっている証であると私はとらえている。
新聞記事の中に、当麻町公民館まとまーるホールにて上川中央部コーラスの集いが開催され、出演された方のコメントが掲載されている。
「木の香りが良く、歌いやすい」と出演者から好評だったこととともに、「ここでコーラスの集いを開いたのは初めて。町産材を使う施設で町民として誇らしかった」。
町民にとって「誇り」である。そう思っていただき言っていただける、まちづくり。うれしいかぎりである。
当麻町はこれからも「継続と進化」、公民連携の力、オール当麻の力で令和の新時代を切り拓いてまいる。未来を明るく、あたたかく創るために。

当麻町長 村椿哲朗(広報紙我が郷土 令和2年10月号掲載)