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2020年6月

正しい情報理解と冷静な行動を~私たちの敵は“ウイルス”

「敵は感染者ではなくウイルス」。新型コロナウイルス感染の収束が長引く中、感染者に対する根拠のない偏見や差別、中傷が広がっていることが全国的に問題となっている。
インターネット上にとどまらず、社会生活においても個人を特定しようとする動きもあり、感染の可能性があっても強まる差別への恐れから医療機関への受診をせずに隠すことにつながりかねず、専門家は「感染拡大防止の妨げになる」と指摘している。
「病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別がさらなる病気の拡散につながる」。日本赤十字社は新型コロナウイルスが生み出す“負の連鎖”を断ち切るためのガイドを作成し、差別を撤廃することの重要性を指摘。不安や恐怖に振り回されないため「自分自身の感情などを客観的に見つめ直す」「ウイルスに関する情報から距離を置く時間を作る」などが提案された。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出の自粛などに応じていないと過剰にSNSなどで指摘する行為は、インターネット上で「自粛警察」などと呼ばれている。
町民皆さんのご理解とご協力を得て、幸いにして当麻町では感染者は出ていない。だが、感染者が出ている、出ていないの問題ではなく、私たちの町においても、心の闇が生み出すモンスターが姿を現すことが決してないとは言いきれない。
悪意はないにしても過剰な防衛本能が問題行動を引き起こす。国や都道府県の要請に応じて予防策をとっているにも関わらず、一部では飲食店を非難するなど、社会問題として状況が報じられている。
見えないウイルスを相手に私たちが互いを傷付けあってはならない。そのことで残るのは、分断や軋轢だけである。
平成27年に当麻町心の教育講演会にご登壇いただいた“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹さんは自身のブログで、感染への恐怖から排外的な人権侵害・差別・選別を生み出すのではないかと不安視。
「フィジカルディスタンスはしっかりととりつつも、心はつながり合う新しい生活様式を皆さんで身につけたいですねー」と、優しいメッセージで締めくくられている。
5月25日、緊急事態宣言が全国で解除され、感染拡大防止と、社会・経済活動の両立を目指す新たな段階「新しい生活様式」対応へと進んだ。
正しい情報に基づいた理解と冷静な行動。私たちの敵は“ウイルス”である。

当麻町長 村椿哲朗(広報紙我が郷土 令和2年6月号掲載)