「里山を求めて」  旭 昭男(北星2)

 時々、伊香牛と北星にまたがる高台を散歩している。そこから見える田園風景は非常に美しい。ほぼ正面に将軍山、左の奥に当麻山を背景として雑木林が濃淡をなして幾重にも連なり、その間々には農家が点在して1枚の素敵な絵を構成している。冬の晴れた日は、雪原に立つ樹木が白い花が咲いたように輝き、清々しく爽快な気分になる。将軍山がたなびく朝霧の上にそびえる時はただ単に感動してしまう。
 15年前の転勤で、当麻が子供の通学等を考えると便利で住みやすいと考えて転住してきた。時が流れ、子供が巣立つ頃になると自分の定年が近づいていた。これまでの借家住まいから、今度は「終の棲家」を求めて家内と旭川市内や近郊の町村を探し回った。それは約2年半に及んだが、ピンとくる場所を見つけることができないでいた。
 私は子供の頃、仲間と共に森を探検して秘密基地をつくったり、山ブドウ・コクワや野イチゴを腹一杯に食べたり、クワガタを求めて奥深くに踏み込んだり、また落ち葉の下に眠るカエルやサンショウウオを求めて遊び回り、森の中は自然の恵みが溢れる空間であることを体験していた。しかし、自分達がそのような場所を探しているとは気づいてはいなかった。
 その頃、上川町に一人住まいしていた母を訪ねて、この高台を通り抜けることが多くなっていた。この高台からの景観と広がる雑木林とが気に入り、私たちが求めている「棲家」は、こういう場所だと初めてピンときたのである。こうしてここに魅せられて6年前にきたのである。
 裏の林に茂っていた笹を刈って小さな道をつくり「こもれびの散歩道」と名付けた。夏には樹木の葉が空を覆い、さわやかな空間をつくる。足が弱った母(91)は、天気の良い日にはここで杖をついて散歩し、途中にあるベンチでひと眠りして戻ってくる。散歩を終えると「今日は十分運動した」という満足気な表情をしている。雑木林を家族みんなで楽しみ大切にしていきたい。

(2010年2月号・広報とうま掲載文より・第40回エッセー)