「当麻のキャリアウーマンたち」   菅野 貴子さん(伊 1)

 私が、当麻で米作りを始めて早14年が過ぎた。この間、雑草(ヒエ)に悩まされない年はなかった。
 このヒエに、果敢に立ち向かってくれるのが、年齢70歳前後のデメンさんたちだ。彼女らは、田んぼに入るや否や水を得たカモ(?)のように水をひっかきまわして除草する。その手の動きの早いことといったら!
 さらにすごいのは手の動きと連動して口がよく動くということだ。ワッハッハ!ガッハッハ!と話が盛り上がってくると、なお、作業の手が早くなるから不思議だ。私なんか話に加わると、逆に遅くなるのに。
 そうして一日中、田んぼの中で四つんばいになったままの作業が、彼女らは4カ月間続く。なぜ、そんな重労働に耐えられるのか。いや、耐えているわけじゃない。むしろ、楽しんでさえいるようだ。このパワーはどこから来るのか。
 小さいころから働くのが当たり前に育った。だから、のんびりと育った私とは鍛えられ方が全く違う。今から30年後の私、同じようには働けないだろうなあ。
 ところで、目をわが子に向けた時、少々不安になる。
 今は、勉強、部活だけで忙しすぎる毎日。家の手伝いをする時間はほとんどない。中学・高校生時代は、一つのものに打ち込む時期かもしれないが、果たしてそれだけでよいのだろうか?
 うちにくるデメンさんのように働け、とはいわない(私も親に甘えてきたし)が、小さいころからいろいろな仕事や苦労を経験することで、臨機応変に、しぶとく、しかも楽しく生きていく術を身につけられる気がする。
 とは言いつつ、夏休みが終わりに近づいている今、仕事させるか宿題させるか、両者の間で揺れ動く私である。

(2010年9月号・広報とうま掲載文より・第47回エッセー)