「図書館にて」 水野 久美子さん (中央7)
この我が郷土の「らいぶらりぃ」で図書館のお知らせページがあります。そこから零れ落ちるような話しですが少々おつき合いください。
この館内の本で、どれほど小説家の名前が並んでいるのか数えてみたことがあります。エッセイ・児童書・その他のジャンルの書き手は抜かして、背表紙に「913」の番号がついている日本の小説家に限定すると、実に約780人分、4列裏表6段の書棚に収まってる、有名無名新人大御所とさまざまな名前、それでも世の中の作家のほんの一部でしょう。
その棚の本から時には、おもしろいことが起こります。それはある日のこと、朝から、ある一冊の本が気になり、探すとその作家の段になく「いちい号」の棚で見つけたので帰りに借りるつもりで棚へ戻し業務についていました。ある人が「この本ありますか」とメモ書きの紙をさし出されたのですが、驚いたことに探しにきたのは、今朝のその本。あまりの偶然。なぜ?新刊でも話題の本でもなく暫くひっそりと身を密めていた本。
けれどその本が発していた主張を私も、その方も同じ日にキャッチしたに違いないでしょう、なにしろ約4万冊近くの蔵書の中からの一冊です、本に呼ばれたのかも…。これに似たことでは、掃除の時少し念入りに本を揃そろえたり位置を動かしたりすると不思議にもその後、すぐ借りられていくことが割に良くあることです。静かな館内ですが案外、音や声ではないけれど賑やかに「私を借りて」「私を読んで」と発信している本たちではないでしょうか、そう思えたうれしい出来事でした。
(2012年4月号・広報とうま掲載文より・第64回エッセー)
この館内の本で、どれほど小説家の名前が並んでいるのか数えてみたことがあります。エッセイ・児童書・その他のジャンルの書き手は抜かして、背表紙に「913」の番号がついている日本の小説家に限定すると、実に約780人分、4列裏表6段の書棚に収まってる、有名無名新人大御所とさまざまな名前、それでも世の中の作家のほんの一部でしょう。
その棚の本から時には、おもしろいことが起こります。それはある日のこと、朝から、ある一冊の本が気になり、探すとその作家の段になく「いちい号」の棚で見つけたので帰りに借りるつもりで棚へ戻し業務についていました。ある人が「この本ありますか」とメモ書きの紙をさし出されたのですが、驚いたことに探しにきたのは、今朝のその本。あまりの偶然。なぜ?新刊でも話題の本でもなく暫くひっそりと身を密めていた本。
けれどその本が発していた主張を私も、その方も同じ日にキャッチしたに違いないでしょう、なにしろ約4万冊近くの蔵書の中からの一冊です、本に呼ばれたのかも…。これに似たことでは、掃除の時少し念入りに本を揃そろえたり位置を動かしたりすると不思議にもその後、すぐ借りられていくことが割に良くあることです。静かな館内ですが案外、音や声ではないけれど賑やかに「私を借りて」「私を読んで」と発信している本たちではないでしょうか、そう思えたうれしい出来事でした。
(2012年4月号・広報とうま掲載文より・第64回エッセー)