農の門をたたく前に

■農の門をたたく前に、伝えておきたい農業のこと・・・・

最も根本的なお話しです。あなたは、どうして、農業で生計を立てようと思ったのですか。

 確かに農業のある生活は素晴らしいものです。綺麗な空気、美味しい水、のどかな風景、生き物とのふれあい、満天の星、ゆっくりと流れる時間、丹精込めて栽培された朝もぎ野菜の美味しさ・・・・このような、「農業のある生活を楽しみたい」というのなら、都市部によくある市民農園やファームステイなどを利用することも考えられます。 

 しかし、農業は、自然を相手にする職業であり、レジャーではないのです。一定の投資が必要であり、経営が軌道に乗るまでに数年を要し、その間の生活費の確保や予想外の気象災害の発生、農作物価格の変動による所得の減少などもあります。
 また、農業の担い手になるということは、農村地域を守る地域社会の担い手になるということ、けっしてあなた一人で完結するものではないのです。

 農業者になるということは、 それらのことを計算してなお、農業にそれ以上のやり甲斐を見つけるということなのです。 

 あなたが、農業を職業として選択しようというのなら、長くなりますが、ぜひ次のことを、あなた自身のこととして確認してみてください。 
 

【確認1】

 まさか、田舎で土いじりをしたいから農業をやるのでは・・・。農業の担い手になるということは、自給自足の仙人になるのではなく、農村地域を守る担い手になるということ。そう当麻町は考えています。
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・現実逃避になっていないですか?
・農業のリスクを考えましたか? 
・密接な近所づきあいができますか?
・共同作業ができますか?
あなたが、農業をしたいと考えた動機は何ですか? 
「自分で作った農産物を食べて自給自足したい」「田舎で暮らしたい」などという理由が主であれば、もう一度考え直してください。
 農業という職業で生活していくためには、多くの努力が必要です。自然が相手ですから思いもよらない事態も数多く発生します。栽培技術のみならず、消費の動向までをも把握する手腕が問われるのは、会社の経営と同じです。単なる思いつきや現実逃避型の就農では、家族や周囲の農家にも迷惑をかけるだけで終わって しまいます。 

 そして、農業がただの自営業と異なるのは、「農地」という特別な場所で仕事をするところです。農業は土地とつながった産業です。田畑からものを生み出すという意味だけではなく、その土地をとりまく風土や地域社会と表裏一体の関係なのです。例えば、農地は、農地法で管理され、誰でも彼でも、農地を借りたり売買したりできない仕組みになっています。農地にそのような規制がかけられているのは、農業が地域社会と不可分の「生活文化」だからとも言えるでしょう。
 また、農村地域では、自営の農作業以外にも、共同作業や会合、または、直接営農に関わらないことでも様々な行事が行われるなど、地域の一員として協力しなければならないことが少なくありません。例えば、あぜ草刈りや共同用水の清掃等、ある意味で個人の営農は、地域での共同作業の上で成り立っているのです。
 我々当麻町が求める農業者は、ただ単に自らの農業のみを行う方ではなく、自分のみならず地域の仕事と生活を守る、農村地域の担い手です。

 

【確認2】

 農業者はサラリーマンではありません。技術者であり、経営管理者であり、当然、資金も必要です。そして、就農後もしばらく続く農業のリスクや厳しさを理解していますか。
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・農業者は技術者であり、経営管理者であることを知っていますか?
・農産物が天候に左右される市場商品であることを知っていますか?
・農業を気長に取り組む根気と熱意がありますか?
【確認1】でも触れたように、農業を始めることは、会社を興しその経営者になることを意味します。採用されたら明日からでも社員になれて、1カ月後には給料がもらえるサラリーマンとは違います。
 経営を開始するには、少なくとも2年程度の農業研修により身に付けた技術が必要です。そして、農地、施設、機械等の資本装備をはじめとして運転資金も必要です。当然、指示してくれる上司はいませんから、天候から、経済や農業の情勢等を自分で全て判断し、経営をしていかなければなりません。
 さらに、就農しても、農業は月々決まった収入があるわけではないので、農産物を販売し収入を得るまでの間の肥料代、農薬代などの運転資金が必要ですし、毎日の生活資金も必要になります。
 また、農業経営が軌道に乗るまでには、3年から5年程度を要するケースが多く、その間の生活費の確保や気象災害の発生による農作物への打撃、農産物価格の変動による所得の減少や不慮の事故なども考えられます。
 農業に関するマイナスの情報を収集した上で、「なんとかなるさ」ではなく、そのリスク管理を即座にシュミレーションできるか。また、その不安定さを長期間にわたって耐える根気や熱意があなたにはあるでしょうか。
 

 以上、2つの確認事項を冷静に考えていただき、ぜひ、当麻農業の門をたたいていただきたいと考えています。
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