メダル以上の感動と言葉の大切さ(平成26年3月号掲載)

 数々の感動と、支えてくれた方に感謝の言葉を残し、ソチ五輪は終りを遂げた。私も数日間、夜8時半就寝、朝1時起床の変則生活が続いた。スポーツ中継にはのめり込むタイプなので、ライブで見なければ気が済まない。
 8個のメダル獲得も立派な結果であるが、今回のオリンピックは、メダル以上の感動の場面を数多く残してくれた。町民のみなさまも、選手の活動に胸打たれ、清々しい気持ちで何度か朝を迎えられたことと思う。
 モーグルの上村愛子選手、フィギュアの浅田真央選手が、涙の後に見せてくれた笑顔は、実にさわやかで美しかった。流した涙とはじける笑顔の理由(わけ)を、我々が理解するのに説明は必要としなかった。メダル本命といわれながら逃した姿に、こんなに感動したことは記憶に残っていない。
 スキージャンプ高梨沙羅選手に笑顔はなかったが、閉じ込められた涙と、凛とした受け答えに彼女の人間性が伝わってくる。152センチの彼女が、重すぎるほどの期待を担って飛んだことは誰の目にも分かっていた。17歳時の自分の姿と重ね合わせてみても、どの部分でも重なるところはなく、彼女の絶大さに心打たれる。「すべての人に感謝し、自分の力が足りなかった。次に必ず期待に応えたい」、淡々と話す一言一言に胸が詰まる。
 素敵な場面を見せていただいた後だけに、あの高名な方の発言は、何とも悲しくてやりきれない。「あの子、大事なときには必ず転ぶんですね」「負けると分かっている団体戦に、浅田さんを出して恥をかかせることはなかった」
 マスコミから批判の集中砲火を浴びると、「真意と全く違う。団体戦にて戦略を間違えたと指摘したかった」などと釈明。人間、口から出る言葉が本音ではないだろうか。まして、本大会の団長は橋本聖子参議院議員である。戦略うんぬんは、スケートと自転車で7度の五輪を経験していて、オリンピックの申し子といわれた橋本団長に失礼である。
 浅田真央さんは、「人間なので失敗はする。失敗したくて失敗するのではない」ときっぱり。どちらが大人のコメントなのか、一目瞭然である。
 言葉の大切さを自らに言い聞かせ、そっと胸に手を当てている。

(平成26年3月号・広報とうま掲載コーナー・第121回随筆)