『田中正造のゆうき』を今に伝える6年生(平成27年11月号掲載)

秋の収穫作業も終りを告げ、冬を迎える準備の気ぜわしさに季節の移ろいを感じる今日この頃。
過ぎ去りし一年を思い返すのもこの時季である。
国は大きなうねりの中で、三本では足りず、再に三本の矢の準備を進めている。
TPP交渉での大筋合意は、農業と経済界との利害が入り組み、どう国益につながるのか不透明感が漂う。
安全保障関連法は、いくら議論は進んでも国民の理解は深まらず、平和か戦争かの二極論化になってしまった。
東京オリンピック誘致成功の喜びもつかの間、一度決定されたエンブレムに盗作疑惑が生まれたり、新国立競技場のずさんな計画や予算の発覚により、おのおの白紙撤回の憂目に遭ってしまった。
あの「おもてなし」が、涙声に聴こえてならない。
追討ちをかけるように、マンションをはじめとする杭打ち工事の、データ偽装問題まで発生してしまった。
世界に誇る、勤勉で誠実な日本の姿が崩れていくようでやるせない。
思い返せばこの10年間、大きな動きがあった年月でもあった。
平成の大合併で町村が脅かされ、地方交付税の大幅削減により行財政改革まったなしに追込まれた。かつ郵政民営化をはじめとする大きな課題を乗り越えてきたが、今日ほど国論を二分する課題が集中することはなかった。
過日、当麻小学校の学習発表会で、「田中正造~ゆうき~」が6年生により演じられた。
足尾銅山鉱毒事件(日本初の公害事件)を告発した政治家であり、渡良瀬川沿いの人々を救うため、国会議員という職を投げ捨て一生をささげた姿を、生徒は実に熱く演じていた。
クライマックスは、「天皇への直訴」である。当時は天皇への直訴は法律上「死刑」であり、田中正造の真に命を賭けての行動は、演じる生徒全員の魂を捕えたことと思う。
「一年先を見たら花を植え 十年先を見たら木を植え 百年先を見たら人を育てる といいます」
胸を張り、強い気持で訴える言葉は心に響く。
食育、木育、花育を基本としてまちづくりを進める当麻町。
地方創生、そのものを問う重い言葉である。

(平成27年11月号・広報とうま掲載コーナー・第139回随筆)