題名が思いつかない悲しい出来事(平成26年7月号掲載)

 近頃、目を覆いたくなるような事件や耳を疑うような事故が数多く起きているが、今回の出来事はその最たるものである。
 父と子の2人暮しをしていた斉藤理玖(りく)君(当時5歳)の白骨化した遺体が、神奈川県厚木市のアパートで見つかった。亡くなる2カ月程前からは、1食分の弁当を週1~2回与えられ、玄関は施錠、窓は目張りされ、外出できないようにされていたという。
 好きな女性宅に身を寄せていたため、ほとんど家には寄りつかず、2年程前からは電気も止められていた。夜の暗さにおびえ、夏の暑さ冬の寒さはどんなに辛かっただろうに…理玖君。生前最後の姿を見たのは、理玖君の死亡に気付く1週間前であった。
 立ち上がることもできず、か細い声で「パパ、パパ」と呼んでいたが、その場にいるのが怖くなり、1時間も一緒にいられずに家を出たという。立ち上がる力もうせ、絞り出すような声で「パパ、パパ」と呼ぶ理玖君よ、最愛の父の背を目で追い、こう叫んでいたことだろう。「パパおなかが空いたよ」「パパ怖いよ」「パパ助けて」
 こう書いている今も、胸が締めつけられ字がかすんで見える。よく“畜生”みたいな男だと表現するが、比較する動物に対し失礼と思う程、残忍な父親である。
 理玖君と同じ5歳の子どもが詠んだ詩を思い起こす。テレビで、アフリカの飢餓状態の子どもたちを見て、発した言葉を母親が書きとめたものである。

〔あの黒い子ども達〕
お母さん
あの黒い子ども達かわいそう
あんなにやせてしまって
手がなんだか棒みたい
だったらいいこと考えた
あのお母さん達は
日本に来て赤ちゃんを産めば
いいじゃないか
そしたら 食べものがたくさん
あるから
ね そうでしょう
お母さん
(「こどもの詩」川崎洋 編)

 理玖君、あなたに心を痛めた多くの人達は、手を合わせこう祈っています。
 「同じ日本人として、ごめんなさい。今度こそ、愛情あふれるお父さん、お母さんのもとに生まれ変わってください。」

(平成26年7月号・広報とうま掲載コーナー・第125回随筆)