「『おひさまのかけら』パート II 」(平成21年9月号掲載)

 先月号に引き続き、詩集『おひさまのかけら』の話しをさせていただく。
 自らも詩人であるこの本の編者の川崎洋さんが、ある新聞が取り組まれていた『こどもの詩』の選を20年間にわたり努めておられた。新聞に掲載された子どもたちの詩の中から、さらに精選した227編を収録し出版された本が『おひさまのかけら』である。
 先月号でも紹介させていただいたが、どの詩も心温まり微笑ましい。また詩と同様に、川崎さんの人柄がにじみ出た優しい寸評にも心打たれる。

勤労感謝の日

母ちゃんが行った
そうじ 洗たく 料理
みんな私にまかせて
楽しさを背負って 飛行場へ
向かった 母ちゃんの後ろ姿
母ちゃんの
四日間の勤労感謝の日

沖縄は晴れかな

(茨城・小学6年女の子)
=むだなことばがひとつもなくじょうずに書けています。読んでいて胸がじんとなりました。おわりのところを一行あけたのもよかったと思います。

てんごくのおじいちゃん

がいこつに なっても
すきだよ
こんど くるまで
まっててね

(千葉・5歳の女の子)
=これ以上の“好き”はありません。絶句!

川崎洋さんは1930(昭和5)年東京生まれ。日本語が持つ豊かな世界を愛し続け、詩作のほか放送脚本、エッセイ、童話など幅広い執筆活動を続けられた。2004年に惜しまれながら他界されたが、この間紫綬褒章を受章されている。私は川崎さんと少しご縁をいただいており、結婚の際にこんな詩を贈っていただいた。

祝婚歌

見えてくる
くっきりとした水平線
見えてくる
それはまだとてもぎこちない
仕草だけど
あさぐろい手と 少しふるえ
ている白い手との交叉
見えてくる
新芽のすかしの入った赤ん坊
たくさんのものが
今日から見えはじめる
今日は
その一番最初の日 初めの日

 あの日から38年。時は激しく流れ去り、美しい日本語や日本の文化が取り残されていくようでならない。

※『おひさまのかけら~「こどもの詩」20年の精選集~』川崎洋・編、2003年中央公論新社刊

(平成21年9月号・広報とうま掲載コーナー・第77回随筆)