「悔しさをバネに、上野順恵(よしえ)さんに輝く金」(平成21年10月号掲載)

 「上野順恵が ”金” 常に先手精神力姉に学び ”女王”」「すべて一本 上野順恵頂点 冴える技 実力証明」。圧倒的な強さを称える見出しが新聞紙上で踊る。世界選手権柔道女子63kg級優勝。上野三姉妹の活躍は、我が町にとっても誠に嬉しいことである。
順恵さんは旭川南高時代、1年生で高校日本一になり、早くからその素質を期待されていた。社会人となっても期待通り順調に結果を残してきた。
しかし北京五輪の選考では、ライバルの谷本歩実さんに2度勝っているのに「決め技に欠ける」との理由で代表から漏れた。上野選手に敗れながらも代表に選ばれた谷本選手は、北京五輪で金メダルを獲得している。
悔し涙に暮れながら恨み言は一切言わず、順恵さんは次の目標を定め黙々と練習に打ち込んでこられた。全て「一本勝ち」の今回の優勝、決め技不足を指摘されたあの悔し涙を振り払う、順恵さんの「心意気」が伝わってくる。
 上野法善・和歌子夫妻が当麻スポーツセンターで誠心館柔道場を開いたのが平成5年である。当時、小学5年生の順恵さんは中学3年までスポーツセンターで練習を積まれている。
 私も何度か誠心館柔道の練習を見せていただいた。厳しい稽古に顔を歪め、大粒の涙を流す子供達がそこにいた。柔道一本槍ではなく、礼儀を重んじ、人としての強さ・優しさを重んじている上野ご夫妻の指導方針が伝わってくる。
 去る9月18日、旭川市において優勝祝賀会が開催され、私は糠谷教育長共々出席させていただいた。会場では順恵さんと隣の席でもあり、試合とは違う優しく穏やかな順恵さんに接することができた。
気配りを忘れない、柔らかい話し方をする順恵さんのどこにあの闘争心があるのだろうか、と思わせる程普通の女性である。
 当日私は来賓挨拶の指名をいただいた。「上野様ご家族と当麻町は、温かいご縁をいただいている。ご家族の籍は当麻町に無いが、私達は上野様ご家族は当麻町民と思っている。これからも、町を挙げて応援していきたい」。
 苦しんだ重みだけ大きく成長された順恵さん。3年後、ロンドンの空から、はち切れんばかりの笑顔が届くことを信じている。

(平成21年10月号・広報とうま掲載コーナー・第78回随筆)