日本航空の救世主――稲盛和夫さんの「生き方」(平成22年2月号掲載)

 郵便局が民営化され、社会保険庁も日本年金機構に組織変更された今、日本航空までも会社更生法の適用を受け、事実上の経営破たんという事態を迎えてしまった。最も安定した企業であり、憧れの職場として映っていた日本航空だけに、破たんという言葉に信じられない気持ちであった。
 しかし、時間の経過とともに財務内容が明らかになるにつれ、2兆3千億円という負債額にただ「あ然」としてしまう。破たんするべくして破たんしたといっても過言ではないだろう。2月から日本航空は新体制でスタートしたが、旭川空港にとって最も歴史深く馴染み深い会社だけに、ぜひがんばってほしいと願っている。
 再生日本航空の救いは、最高経営責任者に京セラ名誉会長の稲盛和夫氏にご就任いただいたことである。記するまでもなく、氏は京セラ、KDDIの創業者であり、高貴な徳とカリスマ性を持ったすばらしい経営者である。日航再建の指揮をとっていただけることは、誠に心強くありがたい限りである。
 稲盛さんは、65歳の時に社業を後進に譲り、得度をして仏門に入られている。「世のため人のために役立つことをなすことが、人間として最高の行為である」との信念から、1985年に「京都賞」を創設した。個人が持っていた京セラの株式や現金など2百億円を拠出して「稲盛財団」をつくられ、また毎年科学や思想、芸術などの分野で活躍、貢献した人たちを顕彰し、その功績をたたえている。「京都賞」は現在では、ノーベル賞に匹敵する国際賞として高い評価を受けている。
 稲盛さんの著書『生き方』には、人の生き方・企業の生き方というものを読者に強烈に伝える次のような記述がある。「企業は利益を追求するだけでなく、社会の公器として世のため人のために尽くす責務もある。京セラを創業し、会社の基礎も固まってきたころ、私は暮れのボーナスを社員一人ひとりに手渡したあと、その一部を社会のために寄付することも考えたらどうかと提案した。すると社員らは賛同し、同額のお金を会社からも提供して、お正月にお餅も買えないような貧しい人に活用いただいた。ボーナスの一部を快く寄付してくれた社員。これが、今日京セラが行っているさまざまな社会貢献事業のさきがけとなり、その精神は今も変わることなく生きている」。
 国会は今、政治とカネの問題で大揺れである。稲盛さんの「生き方」が、遠く霞(かす)んで見える。

(平成22年2月号・広報とうま掲載コーナー・第80回随筆)