「祝、かたるべの森 美術館」(平成22年5月号掲載)

 障がい者の夢と、町民の期待を乗せた施設がまた一つオープンした。旧伊香牛小学校を活用した、北海道初の障がい者美術館の誕生である。
 10年近く、かたるべの森にて創作活動に励んできた、29名のアーティストの作品が並ぶ。 ”私のいる場所・私がいる場所” 美術館のコンセプトが心に響く。かたるべの森の仲間にとって、美術館は、まさしく自分のいる場所であり自分がいる場所だと思う。
 伊香牛地区のみなさんのご理解をいただいたとはいえ、輝かしい歴史に終止符が打たれた寂しさから5年。105年の歴史を刻まれ、2326名の想い出を残された学び舎が、障がい者芸術のそのまま拠点施設として、見事によみがえった瞬間である。
 5月2日には、関係者が大勢集い美術館のスタートを祝った。
 かたるべの森をはじめ、我が町の福祉施設を中心に、多大なご支援をいただいている、日本財団のみなさまもかけつけてくださった。高い理想と夢を掲げてスタートを切ったかたるべの森。着実に、一つ一つ実現に向けて歩みつづけてこられたのは、一重に日本財団のご支援のお陰といっても過言ではない。
 私も時おり、東京虎の門にある、日本財団へご挨拶のためお伺いさせていただいている。いつも変らぬ優しい対応と、かたるべの森に対する愛情に、言葉に表すことのできないありがたさで心が満たされる。 「障がいを持たれた方も町民の中に入り、普通に暮せる町でありたい」、町民の理解と関係者の熱い支援は何よりも心強い。
 旧開明小学校も、札幌新陽高等学校に、食と農にふれる農業実習の場としてご活用いただいている。開明開拓の、血のにじむような努力の足跡が、将来ある高校生の心に届いてくれたなら、この上ない喜びである。
 子供たちの歓声が途絶えて久しい両校が、新たに教育の場として産声を上げた。遅れていたこぶしや桜もまもなく花開き、北国が一番躍動する季節を迎えた。野も山も百花繚乱(ひゃっかりょう らん)、待ちわびていた春を楽しみたい。
 低温が続き、厳しい農業のスタートとなったが、農の難しさ農のありがたさを感じる時季である。

(平成22年5月号・広報とうま掲載コーナー・第83回随筆)