「手紙」 拝啓 十五の君へ(平成22年10月号掲載)

 町内の各学校・幼稚園・保育園では、秋の文化行事が目白押しである。先陣を切って【楽笑(楽しく笑うなんて協力すれば楽勝だ!)】のテーマのもと、当麻中学校学校祭が開催された。
 クラス全員で取り組む合唱コンクールは、一段と熱が入る。私の主張が終了し、合唱コンクールが始まる20分の休憩時間が私は特に好き(?)だ。
 頭の後ろで、突然ワー・オーという奇声が上る。大きな声に一瞬驚くがやがて納得の微笑みに変わる。本番前の発声練習も終わり、クラス全員が肩を組んで気合いを入れる様子は、まるでスポーツの戦い前の光景である。支える先生方の熱意と、生徒達の意気込みで、体育館はますます熱くなる。
 コンクール開始と同時に、その熱気は緊張に一変する。大きく体を揺らして歌うもの、一点を見詰めて想いを歌に託すもの、打込み方はさまざまであるが見事なハーモニーと表情は私たちの胸を打つ。
 3年生は最後の学校祭であり、発表する曲目には数々の想い出が詰まっていたことと思う。ベトナム戦争の悲惨さを歌い、平和に願いを託す「花をさがす少女」。誰にも言えない悩みを未来の自分に語りかける若者からの手紙と、その手紙を受け取った【未来の自分】からの手紙のやり取りを歌にした「手紙」。歌手のアンジェラ・アキさんが15歳の時に自分宛に書いた手紙を大切に保管していた母親から、30歳の誕生日に届いたことをきっかけに作られた『「手紙・拝啓十五の君へ』である。
 この歌をテーマにNHKでは、1年間に4本の特集が放送される異例の展開となったり、紅白歌合戦でも歌われていたが、私は今まで特に気に止めることなく聴き流していた。近年屈指の「全世代が共感できる名曲」といわれているが、合唱コンクールの『手紙・拝啓十五の君へ』は私の心を揺り動かした。
 NHKでは、全国に広がった感動の輪を『「拝啓 十五の君へ』という本で出版した。さっそく取り寄せ拝読したが、全国の中学生の感動が集約されている。「今は先が見えなくて、苦しくて辛いかもしれないけれど、でもきっと大丈夫だから!自分の力を、未来の自分を信じてほしい!」アンジェラ・アキさんの思いがこの曲に込められている。
 秋の穏やかな一日を、中学校体育館で過ごさせていただいた。

(平成22年10月号・広報とうま掲載コーナー・第88回随筆)