「共に生きていく都市と農山漁村の姿を」(平成23年2月号掲載)

 地方自治体を理解し、地方応援の第一人者である、大森彌東京大学名誉教授の話しを伺う度に力が沸いてくる。小泉構造改革時代から続いている地方批判の中にあって、教授が発言される一言一言に元気をいただいている。
 昨年末開催された全国町村長大会にも、ご多忙中にかかわらずかけつけられ、応援メッセージを寄せていただいた。
 「『あらゆる社会的な災いの背後には、ただ一つの言葉が見える。それは巨大さだ。』」と言い放った経済学者がいる。小さな組織、小さな町のほうが、巨大なそれよりも、いかに効率的で愛に満ち安定していることか、と言っている。
 身の丈に合った規模が大切なのです。
 ひるがえって、平成の日本はどうでしょうか。『小さいことは迷惑だ』と言わんばかりに、町村つぶしの市町村合併が推進された。切ないことに、多くの町村の自治は弱かった。
 全国町村会は、都市と農山漁村は対立関係にあるのではなく、お互いに足らざるを補う共生の関係にある。そのことを国是(こくぜ)にすべきだ。と主張してきました。『平成の合併』は事実上幕引きになったが、941の町村を、これ以上減らしてはならないと思う。
 日本列島の地域的多様性をみれば、大中小の多様な自治体が存在することこそ理がある」と話された。大森教授は、東京生まれの東京育ちである。
 昨年秋からのTPPをめぐる議論でも、総理の、覚悟をもって「平成の開国」に取り組むとの前のめりの姿勢は、都市対農山村・輸出産業対農林水産業の構図で、対立をあおるようで憤りを禁じえない。
 前原外相の「わずか1.5%の農林水産業を守るのに98.5%を犠牲にするのか」との発言に本音が透けて見える。この発言を受けて、「農業を守りTPPに参加しなければ二流国家になる」「日本貿易は鎖国状態であり、今こそ第三次の開国に踏み込むべきだ」せきを切ったように、財界支援の声が飛び交う。
 町村の基幹産業であるとともに、国民の生命を支える農業の危機である。アメリカを絡む、政治的取引のにおいがするのも危険である。農業対産業の戦いにするのではなく、政府主導により、産業界が農業を支える仕組みを今こそ構築すべきである。
 「平成の開国」などの軽い言葉を並び立て、振り回される農家のみなさんの悲鳴は、総理の心に届くのだろうか。

(平成23年2月号・広報とうま掲載コーナー・第90回随筆)