「東日本大震災」(平成23年4月号掲載)

 信じたくない、この世の光景とは思いたくない。そんな映像を町長室のTVは映し出していた。
 海から押し寄せる津波が田畑を呑み込み、車や建物をマッチ箱のように押し流す。車の中に人はいないのだろうか、家とともに流されている人は。ともにTVに見入っていた職員から、悲鳴に近い声が漏れる。
 数多くの皆様が尊い人命を落とされ、一カ月が経過したとはいえ、今だ不自由な避難生活を余儀なくされている。心からご冥福をお祈りしお見舞いを申し上げたい。
 悲しみの極みの中で、心からのお見舞いの一言で語るには、あまりにも痴(おこ)がましい気がする。私どもが最も恐れていた、地震・津波・原発事故の、三重災害の現実である。
 苦しい時に寄せてくれる他人の情ほど、骨身にしみてありがたいものはない。英国の新聞社は、一面全面を使って、日の丸を白字で抜き、日本語で「がんばれ、日本。がんばれ、東北」と書いていただいた。見た瞬間、胸が熱くなる。
 韓国紙は、「隣国に人類愛を見せよう」。  「日本人のマナーの良さはすばらしい。国難を一緒に乗り切ろう」と、中国紙も続く。
 ロシア紙も押していただく。 「いろいろ課題もあったが大切な隣国である。最大限の支援を惜しまない。」
  ”みんな同じ人間どうし” 、当麻中学校校訓の教えを思い起こす。
 「泣き叫ぶ声もヒステリーも怒りもない。列を乱すことなく並ぶ姿に、もちろん略奪など起こらない。日本人の礼節はすばらしい。がんばれ東北!」 世界各国から、被災者を称える言葉が寄せられる。
 東京消防庁の総隊長に寄せられた、妻からの返信メールに心が揺さぶられる。
 「日本の救世主になってください」。愛する夫の命を捨てて、日本を救ってほしいと望む妻はいない。心配ですすり泣く姿を押し殺し、夫の背中を押すその言葉に、私たちは、ありがとうと心の中で手を合わす。
 被災地を離れ、二名(ご夫妻)の方が当麻町にお越しいただいた。消防士を含め、四名の町民の方が被災地に乗り込まれた。
 現地の皆様は何を求めていられるのか、町として、して上げられることは何なのか、四名の方と十分打合せして対応してまいりたい。
がんばれ、がんばろう……今、日本の心は一つになっている。

(平成23年4月号・広報とうま掲載コーナー・第92回随筆)