「東日本大震災から3カ月」(平成23年6月号掲載)

 地下鉄も、霞ヶ関官庁の廊下も、夜の街路も暗かった。短いエスカレーターをはじめ、歩く歩道もほとんど止まっている。ビルのエレベーターの稼動は3分の1程度、3階以内は階段をご利用下さいとの呼びかけ看板が、行く先々で目に留まる。
 先月中旬、上京した時の街の様子は、私達の気持ちをさらに暗くしてしまう。東日本大震災から3カ月。悲しみを乗り越えてがんばる被災者の姿は、逆に私達に勇気を与えていただいているが、その後の原発のニュースを見る度にそんな気持ちもなえてしまう。日を追うごとに事態は深刻度を増す。事故の真実が、少しずつ明らかになってくるとの表現が正しいのだろう。九死に一生を得た被災者の皆様の声も届いてくる。
 「屋上の電波塔にしがみつき、波に呑み込まれないよう必死だった。屋根瓦にしがみつき、押し寄せてくる津波に耐えた」
 「車ごと波に流され、ドアも窓も開かず死を覚悟した。途中瓦礫にぶつかりガラスが割れ、外に飛び出すことができ、必死で泳いだ。高台からの、がんばれがんばれの声を受けなんとか生き延びることができた」
 死と直面した一人一人のお話をお伺いする度に鳥肌が立ってしまう。
 悲しみの中ではあるが、国内はもとより世界各国から支援の輪が広がっており、現地の皆様には大きな励みになることと思う。「国難の時、経済人である前に人の命を思う人物でありたい」。自身のツイッターでこう語られた孫正義氏。個人資産から100億円を寄附し、代表職を引退するまでの報酬を全額寄附するとの報道に驚く。行動の早さはさすがである。
 「自然災害はどの国でも起こりうること。津波で苦しむ日本の被災者を支援するため力を合わせたい」と、アジア各国の歌手や俳優が立ちあがった。4月1日、 ”愛に国境はない、311キャンドルナイト” 、俳優のジャッキー・チェン氏が企画したイベントが、香港で開催された。この日だけで、約2億9千万円の義援金が集められたという。
 善意の気持ちと裏腹に、水も空気も日本の食べ物も危ないとの報道も耳にする。一つ一つに、うれしい涙と悔しい涙が交差する。
 反省と教訓を心の中で積み上げ、日本は立ち上がらなければならない。

(平成23年6月号・広報とうま掲載コーナー・第94回随筆)