「がん探知犬“マリーン”」(平成24年6月号掲載)

 「がん特有のにおいを嗅ぎ分ける訓練を受けた『がん探知犬』が、子宮がんなど婦人科がんをほぼ確実に判別できることを、日本医科大学・宮下教授が確認した」との新聞記事を読み驚いた。
 3匹の犬と生活を共にしている我が家にとって、犬を取り上げた記事には、ことのほか心が奪われてしまう。本棚にも、“犬と私の10の約束”をはじめ、犬物語の本が数冊並んでいる。
 犬は、人間の10万倍もの嗅覚を持っていると言われている。千葉県南房総市に住み、介助犬や水難救助犬を育ててきた佐藤悠二さんは、ラブラドールレトリバーの“マリーン”(10才)が、特に優れた嗅覚を持っていることを発見し、厳しい訓練を重ねてきた成果である。
 佐藤悠二さんは、大好きな犬と一緒に仕事するため42才で脱サラしている。「においで病気が分かれば医者はいらない」と周囲に冷笑されながらも、“マリーン”の可能性を信じ、がん探知犬誕生に取り組んでこられた。
 「9割を超える的中率は、がん検診より優秀」と、確認された宮下教授も太鼓判を押している。子宮頸がんや卵巣がんなどの婦人科がん患者43人の尿では、マリーンはすべてがんと判定。子宮筋腫など、がん以外の婦人科疾患29人の患者の尿では、1人分を誤ってがんと判定したが、それ以外は間違わず嗅ぎ分けたそうである。
 婦人科がんに止まらず、大腸がん患者の実験では、38回のうち37回が成功。乳がんや胃がん、前立腺がんで試した場合も、嗅ぎ分けに成功したと話されている。
 警察犬、災害救助犬、盲導犬、介助犬、猟犬と、その特性を生かして活躍することは知っていたが、新たにがん探知犬が誕生したことは誠にうれしい。さしずめ、我が家の3匹の愛犬は、ストレス解消犬である。訳あって、生活を共にすることになったが、3匹共14才を越えた高令犬である。
 交通事故にあったり、花火におびえて23日間の家出と、多難な犬生を歩んでいる。14年間も共に暮らしていると、お互い腹の中や考えが読み取られているようでおもしろい。
 年を重ねるごとに、医療費と手間はかかるが、与えられた環境に不平を言わず、病気も痛みも老いも静かに受け入れる姿に愛おしさが募る。がんばれ!我が家の高令犬。  (2012・6・1記)

(平成24年6月号・広報とうま掲載コーナー・第104回随筆)