「愛犬との別れ」(平成24年8月号掲載)

 私事で恐縮ですが、6月号で紹介させていただいた我が家の愛犬のうち、1匹が突然旅立ってしまった。“町長室の窓から”の原稿を書いた2日後、14年の生涯を閉じた。
 あの日から早2カ月が過ぎ去ってしまったが、悲しさと想い出が心の中で渦巻く。ああしてあげれば良かった、こうもしてあげたかった、後悔ばかりがつきまとう。妻との会話も、生活の折々に、共に暮らした姿を思い返しては言葉は追いかけてしまう。
 そんな時、コピーライター児島令子さんが書かれた言葉に、悲しさが少し救われる。紹介させていただく。

 死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。

おうちを汚すから飼わないというなら、犬はお行儀を身につけることができる。
留守がちだから飼わないというなら、犬はけなげにも、孤独と向きあおうと努力するかもしれない。
貧乏だから飼わないというなら、犬はきっといっしょに貧乏を楽しんでくれる。

だけど……死ぬのが恐いからって言われたら、犬はもうお手上げだ。
すべての犬は永遠じゃない。いつかはいなくなる。
でもそれまでは、すごく生きている。
すごく生きているよ。
たぶん今日も、日本中の犬たちはすごく生きて、飼い主たちは、大変であつくるしくって、幸せな時間を共有しているはず。

飼いたいけど飼わないという人がいたら、伝えて欲しい。
犬たちは、あなたを悲しませるためにやっては来ない。
あなたを微笑ませるためだけにやって来るのだと。
どこかの神様から、ムクムクにあったかい命を預かってみるのは、人に与えられた、素朴であって高尚な楽しみでありますよと。

一行一行に、犬に与えられた天命のような優しさが伝わってくる。
「あなたを悲しませるためにやっては来ない。あなたを微笑ませるためだけにやって来る」
この言葉を信じて、悲しい気持ちに別れを告げたい。

(平成24年8月号・広報とうま掲載コーナー・第106回随筆)