「ヴァイオリン・ピアノと共演したバラ“ピアノ”」(平成25年7月号掲載)

 夜7時の鐘の音を合図に、その会はスタートした。フラワーコンチェルトat時計台~花と音楽のウェルネスタイムをあなたに~
 去る6月13日、日中、札幌大学でまちづくりの話しをさせていただき、夜この素敵な催しに参加することができた。花と音楽がハーモニーを奏でる、至福の時間を過ごさせていただいた。
 バラの花で飾られたホールには、ヴァイオリンとピアノの音色が流れ、絵本の朗読、フラワーアレンジメントと続く。何と言っても一番の目玉は、黄木実さん(当麻町)のバラに寄せるお話しであった。
 この催しを企画した、フラワースタイリストの栗林ゆかさんは、釧路ですばらしいバラと出合い、バラの生産者を探し求めて黄木さんと出会えたと紹介されていた。そのバラの品種が“ピアノ”ということをお聞きし、この催しを企画されたそうである。静まり返った時計台ホールに黄木さんの声が響く。
 「バラ本来は、切り花で命を終えることは望んでいないはずだ。三分か四分咲きで切って出荷するが、その瞬間は心が痛む。本来は、花を満開に咲かせて実を結んで次の世代に繋げていきたいことだろう。バラの命をいただくのだから、消費者みなさんに感動を与えられるバラを作らないと花に申し訳ない。
 バラは意志を持っていて、思いが伝わる。キレイに咲いてほしい、立派に咲ききっておくれ、バラに話しかけながら育てている。お客様のところでしっかり咲いておくれと、声をかけて出荷する時は、俗にいう我が娘(こ)を嫁に出す心境である」。
 おごらず、高ぶらず、トツトツと話す黄木さんの語りは、人柄がにじみ出ており、聞く人の心を打つ。
 木造の時計台ホールには、語る言葉や、ピアノ・ヴァイオリンの音色が、ことのほか優しく温かく響き渡る。正(まさ)しく、バラと音楽と黄木さんの語りがかもし出す、ウェルネスな一時(ひととき)であった。
 帰路につく来場者全員に、黄木さんから贈られた真紅のバラ一輪が抱かれていた。素敵な音楽と黄木さんの語りを聞いた“ピアノ”は、各々(おのおの)のご家庭で夜はどんな夢を見、咲き誇るのだろうか。

(平成25年7月号・広報とうま掲載コーナー・第115回随筆)