坂東眞理子書『70歳のたしなみ』(令和元年8月号掲載)

今月25日、私は73歳の誕生日を迎える。多くの皆さまにお世話になりながら、無事今日が有ることに感謝し、53歳で町長に就任以来20年間、まちづくりに力を尽くせたことにありがたい気持ちでいっぱいである。
70歳を過ぎると、古き時代を懐かしみ良き思い出にふける時間が増してくるのも人生の習わしである。
先日物入れを整理していた時、亡き父の腕時計が引き出しの片隅に潜んでいた。
20年間主人がいなかった時計は、当然その秒針は止まったままである。
初給料か初賞与だったか記憶は定かではないが、社会人となった記念に父にプレゼントした。私にとっては思い出深い腕時計である。
55年前に購入した、「大きな古時計」ではなく「古い腕時計」である。
電池を取り替えると、秒針は再び時を刻み出したので折に触れ使用していくつもりである。
時折TVから流れる昭和の歌に、心洗われる時間も増えている。赤い風船やひとり寝の子守歌のヒット曲で歌手デビューした加藤登紀子さん。シンガーソングライターの走り
だと思うが、当時シンガーソングライターという言葉はなく、私たちは自作自演と呼んでいたものである。
戦後人々は猛烈に働いて「白物家電」の購入に競い合ったり、自動車会社は「隣の車が小さく見えます」「いつかはクラウン」と、量と大きさを追い求めた時代も経験した。
やがてコンビニや量販店が私たちの生活に溶け込み、生活様式も大きな変化を見せながら今日に至っている。
先日書店で「70歳のたしなみ」という本が目に留まり読んでみた。
作者の坂東眞理子さんは現在、昭和女子大学理事長・総長を勤められており、ベストセラーとなった「女性の品格」の作者でもある。
一番興味が引かれたのは、私と同じ昭和21年生まれであり、後半世をどう生きていくが知りたかったからである。まず出生当時の平均寿命が男性47歳・女性49歳には驚かされる。
「70代になったらそろそろ人生のしまい時、終活を心掛け、健康第一、無理をしないで、人に迷惑をかけないようにひっそりと生きていけば良いのだ、と思っていたら大間違いです。歳をとって失ったものを数え上げるより、今持っているものを数え上げ、その力を活用して助けを必要としている人に使えば相手も自分も幸福になります。まずは普段の生活の中に「美しい」「面白い」「素敵だな」と思うことを見つけ感動する、上機嫌で過ごすようにする、今まで生きてこられたこと、支えてくれた人たちに感謝すること。こうした心掛けこそ高齢者のたしなみです。」作者はこれからの生き方を教えてくれている。
心に留め、感謝を忘れず生きてまいりたい。

(令和元年8月号・広報とうま掲載コーナー・第176回随筆)