『年男を迎え 人生のスピード感を思う』(平成30年2月号掲載)

 札幌への出張時、列車の中でJR北海道の車内誌を読むことを楽しみにしている。
 お目当ては、小檜山 博さんが連載されているエッセイ“人生賛歌”である。
 小檜山さんの青少年期を題材にしたエッセイが多く、私の過ぎ去りし時代の思い出が二重写しになり、読み進めるうちに懐かしさが込み上げてくる。
 “人生賛歌”のご縁で、小檜山 博さんが執筆された本は、ほとんどが私の本棚に顔をそろえ並んでいる。
 昨年出版された“人生という花”を購入し、数日前より読みふけっている。
 「20才くらいまでは時間のたつのが遅く感じ、それを仮に時速5キロとすると、20才からは少し早くなって、時速10キロ、30才台で時速30キロ、40才台が50キロ、50才台70キロ、60才から90キロ、70才を過ぎての時速は120キロの猛速にぼくは感じた。
どうして年をとるごとに時間が速く過ぎるように感じるのか、ちょっと考えるとわかりそうだが考えないようにしている。わかりたくない。
 “花一時”という言葉とは、朝顔の命はすぐに終ることから、人間の栄華も短いことのたとえだという。
 “昨日は花嫁、今日は姑”とは、嫁と思っているうちに、いつの間にか姑になってしまったということで、時の過ぎさるのは速いというたとえだそうだ」と、著書の中に記されている。
 私も今年は年男である。
 還暦から早12年。小檜山さん流にいえば、時速90キロのスピードで過ぎ去った12年間だったことになる。
 迎えた年男を契機に、これからの70歳台は120キロの猛速ではなく、少しゆっくり歩んでみたい気持ちにさいなまれている。
 反面、あれもやりたいこれも進めたいと、持ち前の気ぜわしさも時々顔を出す。
町長室の窓からは、最終仕上げに入った新庁舎の姿が、私どもを待ち受けているかのごとく目に映る。
 木の優しさと相まって、ガラス越しに落とされる陽の光は、いかにも温かく穏やかに新庁舎を包み込んでいる。
 2月18日は町民の皆さまをお迎えしての見学会。最終仕上げに忙しく行き交う人々の姿は、完成間近な雰囲気を醸し出している。
 木を植え育てていただいた先人の喜びの声も、カラマツ材を通じて聞こえてくるようだ。
 サービスはスピード感を持って、対応は時間をかけて丁寧に、新しい木造庁舎は使命感を持って3月5日のスタートを待っている。
 
(平成30年2月号・広報とうま掲載コーナー・第160回随筆)